こないだのDOGMA氏の記事が、結構反応あってビックリしました。
やはり、UR DRESSING ROOM読者の皆さんは日本のヒップホップを聴いてる方も多いみたいですね。
てなわけで、これもずっと書きたかったテーマなんですが、時間かかりそうなので敬遠してたけど、ついにやっちゃいます。
先々月、6月17日(金)にリリースされた、KOHHくんの最新アルバム『DIRT 2』の全曲レビューでございます。
ただ、いきなりレビューしても、KOHHくんを全く知らない方からすれば、
「なんのこっちゃ?」
なので、今日は準備編として、僕が感じてきた日本のヒップホップの変遷…
そして、KOHHくんについて、完全に独自の視点からお伝えしていきますよー。
目次
KOHHというラッパー
団地発!東京のアングラ ヒップホップ – Rising From the Tokyo Projects | YouTube
東京都北区王子の団地育ち…
とかそういうことは、皆さんそれぞれ気になった方でググってください。
ここからは、完全な僕個人の視点から見たKOHH評になるので、あしからず。
まず、
「KOHHを一言で表すなら?」
と聞かれたら、僕は迷うことなくこう答えます。
“最先端”だと。
日本語でラップをする方法というのは、日々進化しています。
「そもそも進化って何?」
ってことなんですが、おもにライム(押韻)とフロー(歌い方)ですね。
その中で、間違いなく今新たな道を切り開いているのが、他でもないKOHHだと断言できます。
僕が思うに、日本語でラップをすることと、そのアプローチに関しては、過去に3回ぐらい大きなブレイクスルーがありました。
KOHHというラッパーを語る上でも、このブレイクスルーは非常に意味をもつパートなので、まずは、そこからお話ししていきたいと思います。
BL旋風とDOBERMAN INC
BUDDHA BRANDやキングギドラ、そしてRHYMESTERあたりが、日本語でラップをする方法の基礎をつくったとするならば、最初にその壁を突破したのがBLです。
彼が仕掛けた、DOBERMAN INCの『DOBERMANN』を聴いたときの衝撃は、今でもめちゃくちゃ鮮明に覚えています。
それまでの、“基礎から派生したラップスタイル”…
悪く言えば、“あくまで日本基準のラップスタイル”とは全く違う、“USの流行をめちゃくちゃ意識したラップスタイル”に、最初は、
(何なんこいつら、全く韻踏めてないやん?)
と思いました。
ただ、聴いてる分には、なんかわからんけどカッコいい…
そこで、一旦拍数をしっかり数えながら歌詞を書き起こし、どことどこで韻を踏んでいるのかを調べていった結果、
(あ、これはちょっととんでもないかも…)
と、気付いたわけですね。
要は、1回聴いただけでは押韻に気付けないほど、従来の型とは全く違ったということです。
その後のBL旋風は言わずもがなですよね。
SEEDAという完成形
DOBERMAN INCの成功で、自身のスタイルに確信を持ったであろうBL。
彼が、そのスタイルを完成させるためにタッグを組んだのが、バイリンガルラッパーのSEEDAでした。
SEEDAは、それまでタイトに言葉を詰め込んだ高速ラップが売りでしたが、BLプロデュースの『花と雨』ではそのスタイルを一新。
BLのやり方を余すことなく吸収し、彼の作るトラックの上で躍動します。
そして、『花と雨』は日本のヒップホップ史上でも、最高傑作と呼べるアルバムになりました。
SEEDAという才能あるラッパーを通して、BLのスタイルが完成した瞬間とも言えます。
『花と雨』のリリース以降、雨後の筍のようにSEEDAのスタイルを模倣するラッパーが増えたのが、シーンに与えた影響の大きさを物語ってますね。
AKLOやSALUら新世代の台頭
『花と雨』以降は、どこを見渡しても似たようなラッパーばかりで、個人的にあまり面白くない時期が続きます。
そんな中、USで流行していたフリーダウンロードのミックステープによるプロモーションを、いち早く取り入れるラッパーが出てきました。
そのミックステープで、僕は久々に大きな衝撃を受けることになります。
それが、AKLOです。
彼の『2.0』というミックステープに収録されていた、DrakeのForeverという曲のリミックスを聴いたとき、そのあまりの凄さに言葉を失いました。
彼はそのリミックスの中で、Drake、Kanye West、Lil Wayne、Eminemという、USのそうそうたるラッパーたちのフローを完全にコピーし、日本語でラップしていたのです。
日本語でも、US水準のラップができるということを、あっさりと、しかも鮮やかに見せつけられた瞬間でした。
また、そんなAKLOに勝るとも劣らないミックステープをボムしたのが、SALUです。
当時のUS最新曲をビートジャックしたミックステープ『Before I Signed』も、
(日本のヒップホップもいよいよここまできたか…)
と思わせるには十分な作品でした。
KOHHも模倣することから始まった
KOHH “JUNJI TAKADA” Official Video | YouTube
正直、”JUNJI TAKADA”のころは、特に好きでも嫌いでもありませんでした。
(ファッションもラップもめちゃくちゃUS意識してるなー)
ぐらいの感覚だったと思います。
ただ、続いてYouTubeにアップされた、”VERSACE”や”HELLO KITTY”あたりから、模倣するにしても、日本語の当てはめ方にめちゃくちゃセンスがあることに気付きます。
当てはめ方が不自然だと、いくらフローを真似ても、どこかしらに違和感が出て、スッと耳に入ってこないんですよね。
KOHHのラップには、そういった違和感が全くありませんでした。
そして、そんなKOHHのセンスは、1stより先にリリースされた2ndアルバム、『MONOCHROME』で開花、炸裂します。
KOHH – “Fuck Swag” Official Video | YouTube
まぎれもない、完全なブレイクスルーでした。
それを示すように、『MONOCHROME』のリリース後は、案の定というか、当然というか、KOHHのスタイルを真似たラッパーが次から次へと出てきました。
僕も少なからず予想はしていましたが、
(これでまたおもんなくなるなー…)
と、SEEDAの『花と雨』以降のシーンを思い出して落胆したわけです。
KOHHが破った新たな壁
しかし、そんな僕の落胆もなんのその、その後もKOHHは精力的にリリースを続けます。
その中で、ついにKOHHを“最先端”たらしめる、あの曲が生まれることとなります。
KOHH – “毎日だな” Official Video | YouTube
3:07からのKOHHのフローは、
「KOHH自体USの真似やねんから、俺だってすぐ追いつけるわ」
と、安易に便乗していたラッパーたち、一体何人の息の根を止めたでしょうか?
少しでもラップをかじったことのある人間であれば、
(どこをどうこねくり回したら、こんな乗せ方ができんねん!?)
と、必ず思うはずです。
そして、
(これはちょっと追いつかれへん…)
という、圧倒的な実力差を感じたことでしょう。
KOHHディスコグラフィー
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後半へ続く
さてさて、ずいぶん長くなりましたが、『DIRT 2』全曲レビューの準備編は、お楽しみいただけたでしょうか?
KOHHくんが、今の日本のヒップホップシーンの中で、こんなラッパーなんだということが、少しでも伝われば幸いです。
そして、いよいよ明日は『DIRT 2』の全曲レビューをしていきますよー。
Don’t miss it!!
それでは、本日はこのへんで(笑)
またねー。