唐突ですが、今週末、Perfumeのドームツアーに参戦します。
今からめちゃくちゃ楽しみなので、誰かに言いたいなと思って。
Y-3を履いてるボウズがいたら、多分僕です(笑)
さて、そんなどうでもいいアナウンスは置いといて、本日は、タイトルにある通り、
“ラップでコマーシャルする際の正しい使い方”
をレクチャーしたいなと思います。
広告代理店に勤める方、加えて、企業の広告宣伝担当者は、最低20回は読んで、今後の仕事に役立ててください。
では、まいりましょうか。
目次
ラップを採用したコマーシャルの現状
おそらく、読者の方の中にも、Youtubeをよく利用されている方であれば、最近ヒシヒシと感じていることがあると思います。
それは、
“ラップのCM多すぎじゃね?”
ってことです。
一昔前は、CMにラップが採用されてたら、
(わかってるねー!イイヨイイヨー!!)
ってなってましたが、現在は、
(なんやこれ…ワンパターンなクソ広告が…)
と、イラ立って仕方ありません。
ラップCMの量産により想定される問題点
確かにここ数年、『高校生RAP選手権』や『フリースタイルダンジョン』などの番組により、ラップにかなりスポットが当たっています。
当然、これだけ盛り上がった背景には、広告代理店の尽力もかなりあったことでしょう。
がしかし…
だからといって、一本調子にラップを採用したCMを量産するのは、全くもっていただけません。
こんな手当たり次第なことを続けていれば、せっかく作ったブームも、また一過性で終わってしまいます。
それでも、
(いっとき儲かったし、まぁよかったっしょ?)
とか、目先のことしか見えていないのであれば、センスの欠片もないので、今すぐ辞表を書いた方がいいですね。
なぜ、そこまで断言するのかわかりますか?
それは、今、日本で活動するヒップホップアーティスト・ラッパーのレベルが、昔と比べてもめちゃくちゃ上がっているからです。
バリエーションも多岐にわたっています。
つまり、マーケティング次第で、どれだけでもお金を生み出すタレントが十分揃ってるんですよ。
もし、ここに気付けていないのなら、広告代理店としての程度が低すぎると言いたいんです。
ラップCMを作る上で大切な3つのこと
では、どのようにすれば、ラップを採用した上で、よりユーザーに刺さり、より高い収益を生み出すCMに変えていけるのか?
これには、大きく3つのポイントがあると思います。
ターゲット層・企業イメージにあったキャスティング
まず1つが、キャスティング。
ターゲット層や、企業イメージにあったキャスティングをすることは、CMを制作する上で当たり前のことだと思うんですが、そもそもできていないCMが多すぎます。
(どの層を狙ってるの?)
(この企業のCMに、このアーティストは違うでしょ?)
と、思わず首をひねってしまうようなキャスティングが、本当に目につきます。
“フリースタイルダンジョンからの馴れ合い”
みたいな、安易なキャスティングのことを言ってますよ。
もっと幅広い視野で、ターゲット層・企業イメージにあったアーティストを探してほしいと思います。
“とりあえずラップCM”の禁止
2つ目は、“とりあえずラップCM”の禁止。
これはどういうことかと言うと、
「今はラップが盛り上がってるので、ラップにしちゃいましょか!」
という風に、
“しょうもない会議風景が想像ついてしまうようなCMを作るのはやめましょう”
ってことですね。
もっとクリエイティブな仕事をしてください。
いくらラップが盛り上がっているとはいえ、供給過多になれば、当然ユーザーは辟易するし、とりあえずのCMなんて、かえって逆効果になります。
今まさに、その状況に片足を突っ込もうとしてますよね。
日本のヒップホップの地位を確立させる
最後の3つ目は、日本のヒップホップの地位を確立させるということです。
バカのひとつ覚えでラップを採用したCMを量産する前に、まず注力すべきはここなんですよね。
Snoop Doggが料理番組を始めたと知って、
(USはヒップホップがホンマに確固たる地位を築いてるなー…)
と感じました。
土台が固まってるからこそ、遊べるんですよ。
では、日本はどうでしょう?
国産のヒップホップが、音楽チャートを席巻したことがありますか?
今のチャートなんか、もう死んでますよね?
ただ、そんな状況の中でも、アーティストの頑張りもあって、ようやく、
(イケてるラッパーが増えたなー!)
となってきているのに、またここで遊びばかりを先行させてしまったら、結局、“DA.YO.NE”みたいなイロモノ枠でしか見られないんですよ。
ただ、この点だけにおいては、日本の音楽業界自体をまず変えないとどうしようもない部分もあると思うので、今できることとして、最低限、
“イロモノじゃない、ヒップホップ・ラップのカッコよさをちゃんと見せるCM“
を、優先的に作ってほしいと思います。
ラップを採用したコマーシャルを紐解く
それでは、以上を踏まえて、ここからは実際にラップを採用したCMをご覧いただきましょう。
(これは刺さるなー!!)
というものから、
(あー…これはクソ)
というものまで選んでみましたので、参考にしてください。
正しい使い方ができている例
Reebok CLASSIC X KANDYTOWN [GET LIGHT] | YouTube
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まずは、Reebokですね。
東京都世田谷区出身のヒップホップ・クルーである、KANDYTOWNをフィーチャーしたこのCMは、Youtubeで初めて広告として流れたとき、
(はぇ~…カッコよすな~)
と、思わずとばすのも忘れて見入ったぐらい、ターゲット層と企業イメージがガッチリあったCMだと思います。
Reebokはこれ以降も、DAOKOや般若など、意図が明確にわかるキャスティングをしていて、ヒップホップ・ラップを効果的に取り入れたCM作りをしています。
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レッドブル翼をさずける テレビCM ナポレオン編 | YouTube
続いて、Red Bull。
PUNPEEとZEN-LA-ROCKが、それぞれナポレオンについてキックしたこのCM。
テレビからPUNPEEの声が流れてきたときは、思わずニヤけましたよね。
これも、キャスティングが秀逸だし、アニメーションと相まって、ラップが自然と耳に入ってくるいいCMだなと思いました。
また、このCMとは直接関係ありませんが、PUNPEEは『水曜日のダウンタウン』の音楽を担当していたり、活躍の場をどんどん広げていますね。
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「Style ’20 マシュー」篇(60秒) | YouTube
続くdocomoのCMには、PUNPEEの実弟である5lackの楽曲が使われています。
Style’20の、“若いアスリートが挑戦する姿勢”というコンセプトに、5lackのラップがバチッとハマっていると思います。
事実、このCMがテレビで流れて以降、楽曲への問い合わせや配信希望の声が相次ぎ、フルバージョンが制作・配信されました。
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“CLYDE” w/ Jinmenusagi, YZERR, B.D. & DJ SOULJAH | YouTube
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“正しい使い方ができている例”のトリを飾るのは、XLARGE®です。
PUMA、XLARGE®、mita sneakersのコラボレーションアイテム発売を記念して、DJ SOULJAHがプロデュースした楽曲のMVが、そのままCMになっています。
客演は、Jinmenusagi、BAD HOPのYZERRに、B.D.という布陣。
先に紹介したReebok同様、ファッションとヒップホップ・ラップの親和性は、非常に高いですよね。
XLARGE®の購買層から考えても、非常にいいCMだと思います。
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全くもってダメな例
東西対立 / KEN THE 390,ERONE,DOTAMA,KOPERU feat.マツモトクラブ,月亭太遊,車掌さん,バスガイドさん | YouTube
まずは、日清食品のどん兵衛のCMから。
もう、キャスティングがあからさますぎて、その時点でまず冷めました。
で、テーマが東西対決やから、東西のラッパーに今流行りのフリースタイルバトル形式でラップさせる…
その着想自体は悪くないのかもしれませんが、
“大げさなゴールドチェーンをあえてぶら下げさせる”
とか、ヒップホップのステレオタイプな設定・演出を、ラッパーに対してつけてるのが薄ら寒いですね。
役者にやらせてるんならまだわかるんですけど、KEN THE 390もERONEも、そんなんぶら下げるようなラッパーちゃうからね。
ダサいことさせんといてほしいです。
挙げ句の果て、マツモトクラブも、
「最近ラップ系の企画多すぎじゃね?どうなの?」
って言うてもうてるし。
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BOOSTER – KEN THE 390, 木村昴, はあちゅう, Penny 【FRISK 120% BOOSTER】 | YouTube
続いて、FRISK JAPANのCM。
海外のFRISKのCMはあんなに洗練されているのに、FRISK JAPANになったとたん、ここまでダサくできるっていうのは、ある種の才能を感じます。
KEN THE 390は全く悪くありません。
むしろ、これだけダサい企画で、よくここまでベストを尽くしたなと思います。
とにかく、演出が酷すぎる…
そんで、ラッパーを起用するにしても、FRISKのイメージにKEN THE 390はちょっと違うでしょ?
さすがにYENTOWNとか起用したら、
「Sharpens you up !!」
の意味合いが変わってきそうなんであれですけど(笑)
どうしてもラッパーを絡めたかったのなら、Kiano Jonesとかキャスティングしたらよかったんですよ。
静かにリリックを書いているシーンから始まって、何度も書き直してるから、
(ちょっとスランプなんかな?)
と思いきや、FRISKを1粒食べたとたん、レコーディングブースでめちゃくちゃカッコいいラップをしだす…
とかの方が、100万倍イケてるし、
(FRISKヤベーな!!)
ってなったと思います。
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RAP篇 フルVer. | YouTube
続いては、アコムのCM。
これはもう、根本からダメですね。
サイプレス上野とロベルト吉野が出てるんですけど、彼らは『高校生RAP選手権』や『フリースタイルダンジョン』にも出てるわけです。
要は、その年代に対して、消費者金融のCMを見せようとしてるわけですからね。
企画したヤツはウンコ以下です。
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U-29サラ川発表記念「サラリーマン川柳バトル U-29VS上司」 | YouTube
“全くもってダメな例”のトリを飾るのは、第一生命保険のCMです。
もうこれこそ、オッサン連中が若い営業マンに、
「ラップでいきましょ!ラップが今いいですよー!!」
言われて、
「そうだな…U-29向けの企画だし、ラップを取り入れてうちも若返りをはかろうか!」
みたいな感じで通しちゃった企画の典型でしょ?
見てるだけで恥ずかしいし、
(こんなんされたら、イロモノ言われてもしゃーないで…)
としか言うことないです。
悪くはないよ!
非リアVSリア充ラップバトル/ episode2.「三‘‘充’’士現る!黒いイナズマ絶体絶命!」篇【MCニガリa.k.a 赤い稲妻出演】 | YouTube
「めちゃくちゃイイ!!」
ってわけじゃないけど、
「意図はわかる」
ということで、“悪くはないよ!”の1番手にご紹介するのは、有楽製菓のブラックサンダーのCM。
正直、個人的には見てられないんですけど、ブラックサンダーの購買層を考えたときに、この演出、そして、MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻をキャスティングしたのは当たってると思います。
稲妻繋がりやしね。
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DOTAMA VS 森翔太「スッキリコミュニケーション学」 | YouTube
次はクロレッツのCMですね。
これは、企画者がDOTAMAというラッパーをよくわかってキャスティングしているなと思いました。
シュールやけど、DOTAMAくんの良さがよく出ています。
人間 vs PC RapBattle【DOTAMA vs dynabook】 | YouTube
このdynabookのCMも悪くないな…
てか、DOTAMAくんはキャラが立ってるから、ずっちーな。
(※上記dynabookの動画については、2016年10月21日追記)
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D-STYLE × 般若 オリジナルラップ「FOR THE FUTURE」 | YouTube
“悪くはないよ!”のラスボスは、般若です。
アンファーのCMですね。
般若はギャグもやりますが、あえてシリアスな方の般若で演出したところがよかったですね。
ただ、
(どうしてもラップを使わなあかんかった?)
というところで、“悪くはないよ!”にカテゴリーさせてもらいました。
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レジェンド
最後に、
「これがラップを使ったCMの完成形や!!」
というNIKEのCMを、3つまとめて置いときます。
NIKE-CM Kevin Garnet – ft . Zeebra | YouTube
NIKE-CM Tim Duncan – ft . Dev Large | YouTube
NIKE-CM Jason Williams – ft . Twigy | YouTube
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一切のムダがなく、ただただスタイリッシュ…
こういうCM作りができたら、
(日本のヒップホップもカッコいいじゃん!)
って感じてくれる人が、絶対増えると思うんですけどね。
まとめ
さてさて、本日は、
“ラップでコマーシャルする際の正しい使い方を教えます”
ということで、ここまで書いてきました。
長くはなりましたが、端的にまとめると、
“ラップでCMを作るなら、日本のヒップホップに愛のある人がかかわらないとダメ”
っていう、ただそれだけなんです。
足を使わずに、手持ちの牌でなんとなく作ったCMなんて、刺さるわけがありません。
本当に、日本全国探すつもりで、真剣にその企業イメージにあったラッパーを探し、演出を練って、ひいては、
(日本のヒップホップが、USみたく毎週のようにチャートを賑わす日を願って…)
というぐらい愛情を持った人にこそ、ラップCMを手がけてほしいと思います。
イケてるアーティストを、しょうもない演出で三流に落とすのだけは、絶対にやめてほしいですね。
とりあえず、ここまで読んだ広告代理店に勤める方、企業の広告宣伝担当者の方…
「次のCMはラップなんてどうっすかー?」
と言う前に、最初に戻ってあと19回読んでください。
それでは、本日はこのへんで。
またねー。
自分の気持ちを代弁してくれているようで読み応えがあって面白かったです。
ラップ愛が無い奴が作るCMは本当に寒いし悲しい気持ちになるんでやめてほしいです。その分、上手く使われてるCM見るとぶち上がりますけどw
どんなモノでもそうですけど、本当に好きな人間しかそのコンテンツを操るべきじゃないですよね。
そして、MCバトル=ラップっていう構図になってる今の日本でのヒップホップの地位確立は不可能に近いですよね。悲しい限りです。
とりあえず記事面白かったです!
長文失礼しました。
河童小童さん
コメントありがとうございます。
広告業界のお決まりなんでしょうが、
“稼げるうちに稼いでおけ”
という精神だけで、
“日本のヒップホップを大事に育てていこう”
という信念を全く感じられないCMばかりが量産される現状は、見ていて悲しいですね。
多少時間をかけてでもしっかり育成していけば、本当にUSレベルでヒップホップの地位を確立できるアーティストは揃ってきていると思うんですが…
少なくともこのUR DRESSING ROOMでは、今後も愛を持って日本のヒップホップをご紹介していきたいと思いますので、また遊びに来てくださいね。
視点が曖昧かなと思いました
ヒップホップをコマーシャルで使うなら上手くやってほしい、
というのはわかりますし、同感ですが、
『電通必見』と銘打つ割には広告効果やターゲットなどの掘り下げが甘い文だったので、
無責任にヒップホップ広告に好き嫌いを書き連ねているだけだなと感じました。
広告業界にヒップホップを無責任に扱って欲しく無い、リスペクトを感じてほしいなら、自らも広告業界にそれなりのスタンスで望むべきなのではと思います。
tbamさん
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、【電通必見】は少し過剰なタイトルの付け方でしたね(笑)
今後は、僕自身もしっかりそのあたり掘り下げた記事を書けるよう精進していきます。
貴重なご意見ありがとうございます。
最近のCMラッシュを見てモヤモヤしていた気分がスッキリする、とても気持ちのいい記事をありがとうございます!
企画する側もそうですが、出る側もどうなんだろうと思います。
本来自分のスタイルやブランディングをしっかり持って露出するアーティストが
寒い企画に出てしまう裏には何があるんだ、お前プライドどうしたんだと少々落胆します。
出演しているアーティスト達は現状のCMラッシュをどう見てるのでしょうね。
Feluccaさん
コメントありがとうございます。
確かにそのご意見はもっともですよね。
個人的には、
(よほどCMの出演料が美味しいんやろな…)
という邪推をしてしまうんですが、それが事実かどうかはわかりませんしね。
機会があれば、一度アーティスト自身に直接話を聞いてみたいものです。